小部屋の本棚

読書記憶の保管場所

野良犬の値段

2024/4/4~2024/4/9

★★★★☆

テレビや新聞の舞台裏を曝け出している点が面白い。

現代のインターネット社会において、

もしこの舞台裏が真実なのだとしたら、

テレビも新聞も斜陽の一途だよなぁと感じた。

(マスメディアに精通している百田さんだから真実だと思うが)

 

そして、人の価値とは?命の値段とは?善と悪との境界線とは?

について考えさせられた。

話のテンポも軽やかで、かと言って薄っぺらではなく、

とても作りこまれている。

やはり、百田尚樹さんの作品は面白い。

 

六人の噓つきな大学生

2024/4/1~2024/4/3

★★★☆☆

就職活動の真理を滑稽に謳っている点が面白かった。

 

――最後は圧倒的に『運』

 

運に翻弄される学生は可哀そうな気もするが、

他人の内面なんて結局のところ分かる訳ないのだから、

致し方ないのかもしれない。

学生も企業も悪い部分には蓋をし、良い部分は過大に見せる。

やはり騙し合いか。

学生も大変だけど、採用担当も大変なんだと改めて思う。

 

それにしても、最終選考に残った学生達自ら

内定者を一人だけ選ばなければならないディスカッションって

酷いな。人事の職務放棄も甚だしい。

そんな会社、こちらから辞退させていただきます。

と思ったのは私だけだろうか・・・?

 

本作品はとても読みやすく、テンポも速いのでサクッと読めた。

人間の性格(多面性)を月に例えている点が分かりやすかった。

 

一刀斎夢録

2024/2/18~2024/4/1

★★★★☆

齋藤一の視点で回想されていく新選組の世界。

「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」に続く本作も浅田先生のすばらしい表現に敬服しながら、頁を捲る日々となった。

 

人間を只の糞袋と見做し、冷酷に無慈悲に屠る最強(恐)の剣豪。

そんな斎藤一が「生きよ、鉄之助」と言った場面は、心にドスンと来るものがあった。

斎藤一にとって、鉄之助の存在は希望だったのではないか?

自身を鉄之助に投影し、真っ当な人として生きたい僅かな気持ちを鉄之助に委ねたのではないか?自分はもう鬼の道を歩んできている、戻ることもできない。

だから鉄之助に――。

だからこそ、剣術を教えた。そして戦場で逃がした。

鉄之助は家族に捨てられ、乞食小僧のところを新選組に拾われた。

方や斎藤一は、家族を捨て世間に煙たがられていたところで天然理心流(新選組)に出会った。

両者、なんだか通ずる面がある気がするわけで。

 

それでも斬ってしまった。

否、斬らせることで、鬼と化した恩師を“人間“に引き戻したんだよな、鉄之助は。

 

 

輪違屋糸里

2023/12/26~2024/2/18

★★★★☆

前回読んだ「壬生義士伝」とは違った視点で新選組を見ることができ、

とても興味深い作品だった。

主要な登場人物が善人なのか悪人なのか・・・

見かたが変われば随分と印象も違ってくるものだと感じ、

その魅力にどっぷり嵌る結果となった。

糸里の最後の決意は圧巻であった。

お殿様の御前で詠んだ歌がなんと素敵なことか。

刀を持たぬ武士とはこのことか、なるほど土方も惚れる訳だと一人得心。

 

壬生義士伝

2023/12/7~2023/12/26

★★★★☆

ここに「真の格好良さ」を垣間見た。

他人からどう見られても、何を言われても己の信念を曲げない。

妻子を守る責を貫いた吉村貫一郎。

武士道と友情との狭間で苦しむ大野次郎右衛門。

この二人の最後の別れの場面には思わず涙腺が緩んでしまった。

武家社会のなんと非情で窮屈なことか…。

浅田次郎先生、すばらしい作品をありがとうございます。

天璋院篤姫

2023/11/25~2023/12/6

★★★★☆

もし、篤姫がこの令和の時代に現れ、今の日本人を見たらどう思うのだろう。

こと、ぬるま湯にすっかり浸った私めには、怒りか失笑か哀れみか…。

本作は篤姫の「覚悟」に魅せられました。

すごい女性が居たものだ。

そして、著者・宮尾登美子さんの書き方も素晴らしかった。