2024/2/18~2024/4/1
齋藤一の視点で回想されていく新選組の世界。
「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」に続く本作も浅田先生のすばらしい表現に敬服しながら、頁を捲る日々となった。
人間を只の糞袋と見做し、冷酷に無慈悲に屠る最強(恐)の剣豪。
そんな斎藤一が「生きよ、鉄之助」と言った場面は、心にドスンと来るものがあった。
斎藤一にとって、鉄之助の存在は希望だったのではないか?
自身を鉄之助に投影し、真っ当な人として生きたい僅かな気持ちを鉄之助に委ねたのではないか?自分はもう鬼の道を歩んできている、戻ることもできない。
だから鉄之助に――。
だからこそ、剣術を教えた。そして戦場で逃がした。
鉄之助は家族に捨てられ、乞食小僧のところを新選組に拾われた。
方や斎藤一は、家族を捨て世間に煙たがられていたところで天然理心流(新選組)に出会った。
両者、なんだか通ずる面がある気がするわけで。
それでも斬ってしまった。
否、斬らせることで、鬼と化した恩師を“人間“に引き戻したんだよな、鉄之助は。